『商店建築』2019年1月号に、弊社が企画・設計をした「大塚のれん街」掲載されました
「日本のサンセバスチャン」をコンセプトに掲げる「東京大塚のれん街」は、テーマパークのような複合飲食施設とは一線を画した、「街づくり」をテーマにした横丁であり、街並みに溶け込みつつも大塚のイメージをボトムアップに寄与する仕掛けが施されています。
大正から昭和初期にかけて、大塚には花街もあり、商業地としては栄えていました。しかし今ではその面影はほとんど残っておらず、他の街にもれなく、箱的な建物が増加しています。
JR大塚駅から線路を挟んだ空き物件の目立つ、ありふれた昭和の住宅が立ち並ぶ古びた街並み。これこそが大塚の街の歴史を培ってきた風景であり、街がどんなに新しく、便利になっていっても、やはり心のよりどころは子供の頃に見ていた景色や感じていた空気感だったりします。こういった戦後の物のない時代に建てられた家々はもろく、どうしても保存の対象にはなりにくいですが、一度壊してしまったら二度と建てることはできません。
地元の人々の思い出を大事にしながらも、たくさんの喜びをつくり出すことが本来の再開発のカタチだと捉え、この貴重な街並みを残しつつ街を活性化させる。そんな想いが各地でのれん街を手掛ける理由でもあります。
八つの店舗が身を寄せ合う横丁を設計するにあたり、単に古い民家を改装するのではなく、役割や意味を持たせるため、土の塗り壁などなるべく既存のものを残すように注力しつつも、古い民家を生かすための新たな補強を施すなど、残す部分とつくり直す部分のバランスを考えながらデザインするとともに、外周する道に加え、のれん街の中を横切る通路を設け、歩く道を増やすことで店のハシゴがしやすくなり、滞在時間を長くすることも狙っています。
さらに、店はコミュニティーの場でもあって欲しいという考えから、客席間はあえて狭く設定し、大道芸人や手品師、流しのギターが練り歩き、芸を披露することで、客同士が混ざり合い、何らかの楽しいアクシデントが起こる仕掛けを用意しています。